GLP-1と食べ方|よく噛む・ゆっくり食べると満腹ホルモンはどう動く?
GLP-1は食欲や満腹感に関わる腸のホルモンです。よく噛む・ゆっくり食べる食べ方とGLP-1の関連を、査読研究をもとにやさしく解説します。
「GLP-1ダイエット」という言葉を聞くようになりましたが、GLP-1はもともと私たちの体が食事のたびに自然に分泌しているホルモンです。そして、噛む回数や食べる速さといった「食べ方」が、このホルモンの動きに関わっていることが研究で示されています。結論から言えば、ゆっくり・よく噛んで食べると、満腹感に関わる腸ホルモンの反応が高まりやすいと報告されています。
GLP-1とは何か
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとると小腸から分泌されるホルモンです。主な働きは大きく2つあります。
- 満腹感を高める:脳に「もう十分食べた」というシグナルを送り、食欲を抑える方向にはたらく
- 血糖値の急上昇をゆるやかにする:インスリンの分泌を助け、食後血糖の動きを穏やかにする
つまりGLP-1は、食欲と血糖の両方に関わる「食後の満足感」のカギを握るホルモンです。近年の減量治療薬はこのGLP-1の作用を薬で強めるものですが、食べ方そのものでも分泌は変化することがわかってきています。
ゆっくり食べるとGLP-1・PYYが高まりやすい
健康な男性を対象にした研究では、同じ食事を5分で急いで食べた場合と、30分かけてゆっくり食べた場合を比較しました。その結果、ゆっくり食べたときのほうが、満腹感に関わる腸ホルモンであるGLP-1とPYYの食後の値が有意に高かったと報告されています(Kokkinos ら, 2010)。
同じ量・同じ内容の食事でも、食べる速さが変わるだけでホルモンの反応が変わりうる——これは「どう食べるか」の重要性を示す結果です。
よく噛むこともホルモンに関わる
噛む回数に注目した研究もあります。一口を15回噛んだ場合と40回噛んだ場合を比べたところ、40回噛んだグループでは食事量が減り、空腹ホルモンであるグレリンが下がり、GLP-1がより高くなったと報告されています(Li ら, 2011)。
よく噛むと自然に食事時間が延び、満腹シグナルが届くまでの「間」が生まれます。噛むこと自体と、それによってゆっくりになることの両方が、満腹感の高まりに関係していると考えられます。
今日からできる食べ方の工夫
- 一口ごとに箸(またはフォーク)を置く:自然にペースが落ち、噛む回数が増えます
- 最初のひと口を意識して噛む:食事の入り口でペースが決まりやすい
- 汁物や野菜から始める:早食いを防ぎ、満腹感が立ち上がりやすくなります
具体的な回数の目安は一口で何回噛むべきか、噛む回数を無理なく増やす工夫は咀嚼を増やすコツで詳しく紹介しています。食べる速さと血糖値の関係は早食いと血糖値スパイクもあわせてどうぞ。
GLP-1を「薬で足す」前に、まず「食べ方で引き出す」余地があります。ゆっくり・よく噛むは、道具も費用もいらず今日から始められる方法です。
※減量治療や糖尿病治療でGLP-1受容体作動薬などを使用中の方、血糖管理が必要な方は、食事の進め方について必ず主治医の指導を優先してください。本記事は一般的な情報であり、治療方針を示すものではありません。
出典・参考
- Kokkinos A, et al. “Eating slowly increases the postprandial response of the anorexigenic gut hormones, peptide YY and glucagon-like peptide-1.” J Clin Endocrinol Metab. 2010. PubMed
- Li J, et al. “Improvement in chewing activity reduces energy intake in one meal and modulates plasma gut hormone concentrations in obese and lean young Chinese men.” Am J Clin Nutr. 2011. PubMed
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活」